憲法と社会保障   
 県議会議員 今井光子     (第7回生き生きクラス会より)

image.jpg 今年は日本国憲法ができて70年になります。今憲法を変える動きが高まっています。憲法に書かれていることが時代遅れなのか、実際の暮らしが憲法と合わなくなっているなら憲法に立ち返ることが平和と暮らしを守る道だと思います。
 憲法は前文に「われらは恐怖と欠乏から逃れ平和のうちに生存する権利を有する。」とあります。2016年11月国連総会で平和の権利宣言が採択されました。日本が70年前に決めていたことが国際社会がやっと追いついてきたのです。肝心の日本はこの値打ちに気が付いていません。
 「恐怖」とは戦争やファシズム、「憲法9条」の戦争放棄に、具体的な方法が書いてあります。戦争しない、武器を持たないと明確です。
 「欠乏」とは生きていくには足りないこと、お金がない貧乏、食料、仕事、住宅、医療など。これも憲法25条に生存権に書いてあります。国はすべて国民の健康で文化的な生活を保障しなければならない。そのために社会福祉社会保障、公衆衛生の向上及び増進に努めなくてはならないと明確です。
 9条も25条もないアメリカは、仕事がない学校にいけない、医療が受けられない住む場所がないときの解決策は軍隊に入ることです。連邦予算の6割が軍事予算。国の主要産業が軍需産業どこかで戦争がなければ国が成り立たないといっても言い過ぎではありません。

 今資本主義社会では労働者は労働力を売って自らの生活を支えています。賃金は自らの労働と家族の暮らしや子供の教育などが受けられるだけの金額が必要です。が今では非正規雇用が37%と広がり自分の生活もままならないワーキングプア、「働けど働けどわが暮らし楽にならざりじっと手を見る」石川啄木の時代と変わりません。過労死、長時間労働と極限状態が慢性化しています。8時間働いてまともに暮らせる社会の実現は差し迫った課題です。
もう一つは社会的再配分。これは政治が一番するべきことです。儲けている企業や個人からは当たり前に税金を払ってもらい、社会保障を通じて再配分してすべての人が安心して暮らせるようにすることが政治の仕事ですが、今はお金のあるところを優遇し、ないところからは容赦のない取り立てで格差が広がるばかりです。

 財政学では最低生活費非課税という原則がありますが。これに反するものが消費税です。消費税を導入している国でも生活必需品には課税しないところがほとんどです。金持ち優遇税のためには金持ちに税金を安くした分を他から税金をあつめなくてはいけません。手っ取り早いのがお年寄りから赤ちゃんまで買い物すべてに税金がかかる消費税です。1989年に3%で始まりました。28歳以下の人は消費税はあるのが当たり前になっています。そして税率を変えるだけで税金が入ってくるのです。

1990年ごろから国の社会保障審議会が共助連帯の社会保障といいだしました。そして人権としての社会保障が後退していきます。自己責任が当たり前になってきています。

 生活保護は本来受けられる基準の人の2%以下しか受けていません。これを捕捉率といいますが世界でも日本の生活保護受給者は先進諸外国に比べても最も低い現状です。憲法25条の生存権保障が浸透した餓死,孤独死などはもっと防ぐことができると思います。

 国民健康保険が戦時中戦費調達のため、農村出身兵士の体力向上の名目で始まりましたが。国保、介護保険、年金などの保険料の引き上げは社会保障どころかその金額の大きさは暮らしを脅かすものになっています。介護保険に見られるように要支援1,2が介護保険から外され地域包括ケアでボランティアで支えましょうという流れです。国保も県で一本化にしようという流れでさらに保険料が引き上げられます。

 朝日訴訟を知っていますか。人間裁判といわれていますが生活保護基準が低く、これでは生きていけないと起こしたものです。1960年、東京地裁は、憲法25条の「健康で文化的な生活」は、国民の権利であり、国は国民に具体的に保障する義務があること、それは予算の有無によって決められるのではなく、むしろこれを指導支配しなければならない、と判決しました。

 今核兵器廃絶の署名を持って訪問しています。核兵器がなくなればそのお金で地球上のさまざまな問題が解決できるといわれています。持っていても使えない。使えば人類も地球も滅ぼす兵器はいりません。
戦争ができる国にしようと共謀罪で物言えぬ社会にしようとしています。

 戦後の発展は軍事大国から平和国家に変えることで目覚ましい復興を遂げました。9条は世界から信頼され、25条人権が守られた社会保障は地域経済を潤し、多くの人の安心につながるでしょう。いまこそ自由で平和な社会のために輝かしい憲法をもっと暮らしに生かすようにしたいものですね。この機会に、日本国憲法を読み直してみませんか。

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